すぐに使える対人術

人と上手に話す「対人術」を解説しております。ぜひ、お試し下さい。

【第13回】すぐに使える対人術/関係をつなぐ/プレゼント

人間は、贈り物という文化を持っています。このプレゼントを上手に送れる人は、人間関係においてかなり得をすることができます。今回は人に何かをあげるということについてお話しします。

 

人間は、何かをしてもらったらそれに報いようとする返報性を持っています。真っ当な感覚を持っている人間であれば、自分ばかりが一方的に得をしたり、楽をしたりするのを嫌がります。けれども、相手はすでに行動を完了させている場合には、止めることや一緒にやることができません。すると、何か物を使って、お返しをするということが最も簡単な自分を納得させる方法になります。

これを説明する一番良い例はサービス業です。サービスは本来善意で行う無料の行動です。しかし、サービスを受ける人が対価を支払うので、仕事として成り立っています。これを単純化すると、何かをやってくれたことに対してお金を渡すことで報いる。という流れが見えます。

では、贈り物をした場合には、どのような関係性が生まれるのでしょうか。

贈った物が相手に喜ばれれば、間違いなく良い関係が築けます。気に入られなかった場合でも、受け取ってもらえれば成功と言えます。なぜならば、贈り物を送られたという事実が相手の中には残るので、少なくともマイナスにはならないのです。ただし、明確に嫌がられたり、拒否されるような物は論外です。相手のことを全く考えずに贈り物をすることは邪魔になるだけの最低の行為です。相手にとって価値がある物、喜ばしいと思われやすいものを送るようにしましょう。

 

プレゼントの選び方ですが、自分がもらって嬉しい物、一般的に見て価値が高い物などが適しています。猫に小判というように、折角の贈り物も、相手が意味を分かってくれなければ喜んでもらいにくいのです。ちょっと変な物でも、社会的な価値は低い物でも、自分はこれを気に入っていると分かってもらえれば、どんなものでも良い印象を与えられます。

一番簡単にできるプレゼントは、食べ物です。好き嫌いはあっても、まず拒否されることはありません。よく、おじいちゃん、おばあちゃんが、小さい子どもや孫にアメやお菓子をあげています。これは、子どもは甘い物が好き。という経験を基に取られることが多い行動です。手軽で後に残らず、自分でも食べられる上に、「食べちゃいなさい、内緒だよ。」というコミュニケーションを可能にします。

 

話を戻します。食べ物というのは、生きるために必要な物です。その食べ物を分け与えるということは、大昔から共存共生・信頼の証でした。また、珍しい物・貴重な物・新しい物など、人が欲しいと思う物はたくさんあります。最近は言葉によるコミュニケーションが偏重されていますが、メールや電話、SNSによるやり取りといった手軽な関係だけでなく、一手間かけたプレゼントを活用してみてはいかがでしょうか。簡単にできる関係からは生まれないつながりが作れるかもしれません。

 

<まとめ>

l  返報性の法則を知っておこう。

l  相手にとって意味がある物を贈り物にしよう。

l  プレゼントする物には、自分が良さを説明できる物を選ぼう。

 

謹告

この文章は著者の主観に基づく考察が多分に含まれます。内容を実行して何らかの不利益を被った場合においても、その責任は一切負いかねますのでご了承ください。

また、ここに書かれた技術が誰にでも適するとは限りません。内容を基にして、自分なりの工夫をされることを推奨します。

自分に合った対人技術を身に付けることが最良であり、この文章が読者の役に立つことを願っています。

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【第12回】すぐに使える対人術/香り/匂いと臭い

香りは、いろいろと取り沙汰される頻度の高い要素です。香水やアロマといった良い香りもあれば、口臭・腐敗臭といった嫌な香りもあり、漂う香りの感じ方によって、その時の気分や状態が大きく左右されます。

 

今回は、「におい」についてお話しします。上述した通り、人間は嗅覚によってもその場の印象を判断します。そのため、対人術においては、嫌な「におい」を相手に感じさせることが無いように気を付ける必要があります。

この、嫌な「におい」が何かというと、食べ物が腐った時や焦げてしまった時など、対象がどのような状態にあるのかを判断するのに昔から人間が使っている判断基準の一つです。「におい」については食べ物に限らず、人によっては、雨の匂いから天候の変化を察することができたり、遠くの火事を煙の臭いから感じ取ったりすることができるといいます。

つまり、口臭のする人は、匂いの種類にもよりますが、腐った食べ物と同じ印象を相手に与えることになります。口臭に限らず、体臭がすることは、体が清潔ではないということを印象付けてしまいます。清潔でないということは、病気など何らかの異常を抱えている可能性の高い人間という印象を周囲に与え、疫病などの感染源になり得るという認識につながるため、敬遠されます。

これは、集団生活を営む人間が伝染病に対する防衛手段として培ってきた戦略であり、嫌な「におい」を発する人物を避けようとするのは自然な行動なのです。

 

なので、どんなに面倒に感じても、嫌な臭いの対策はやらねばなりません。親密な関係性を築くには、物理的な距離を詰める必要がありますが、嫌な「におい」を発する体では近付くことさえできません。

かといって、香水や制汗剤など、人工的な香り付けを多様するのも考えものです。ここでの人工的とは、花などの自然物由来の香りも含みます。何故かというと、本来ならばするはずのない「におい」が強く感じられるのは、不自然 → 異常 という認識があるからです。良い香りだからといって、多用するのは周囲に悪臭を撒くのと同じ効果をもたらします。電車などの密閉空間での破壊力を知る人もいるのではないでしょうか。

 

自分から出る「におい」を上手くコントロールできても、空間の「におい」までは制御できません。嫌煙家であれば、喫煙席のそばでは煙のにおいが気になって食事に集中できなかった経験をされたことがないでしょうか。嫌煙家にとっては、たばこのにおいは汚物臭と同じです。しかし、自分からではなく空間に漂っているものですし、喫煙は人の自由ですから、席を変えてもらう位しかありません。大事な話をする時は、自分の「におい」対策をするだけでなく、話の場所に漂う「におい」にも気を配っておくことが重要です。

 

また、相手から悪臭がする場合についてもお話ししておきます。大事な取引先であったり、立場的に上の人であったり、関わらざるを得ない人だったりした時、嫌な「におい」がしても嫌な顔をする訳にはいきません。悪いのは相手ですが、相手の出す「におい」の話は逆鱗であることがほとんどなので、表に出すのは御法度です。どうしても耐えきれない場合は、風邪をうつすと悪い。などと前置きして、マスクを付けたり、お茶を相手に勧めてみると良いでしょう。

 

<まとめ>

l  人間が発する「におい」の多くは不潔の象徴。

l  良い匂いでも、過剰だと悪臭と同じ扱いになる。

l  空間に漂う香りにも気を配ろう。

 

謹告

この文章は著者の主観に基づく考察が多分に含まれます。内容を実行して何らかの不利益を被った場合においても、その責任は一切負いかねますのでご了承ください。

また、ここに書かれた技術が誰にでも適するとは限りません。内容を基にして、自分なりの工夫をされることを推奨します。

自分に合った対人技術を身に付けることが最良であり、この文章が読者の役に立つことを願っています。

 

【第11回】すぐに使える対人術/ファッション2/アクセサリー

アクセサリーは汎用性が高く、様々な場面で使えます。制服やスーツが義務付けられるような画一的な場所でも、ちょっとした自分らしさを表現できるアイテムです。

 

今回はアクセサリーを中心に、以前お話しした内容の応用を組み込んでいきます。人間は光や色、音、匂いなど刺激を与えてくるものに注意を向ける性質を持っています。古代から装身具は存在しており、派手な色や目立つ形をしたものを身に付けていたと考えられています。宝石や金細工など、アクセサリーは富や余裕の象徴でもありました。生活には役立たない道具を作り、身を美しく飾ることに時間を割いても平気だという証であったのです。

現在でも、飾らないよりは飾る方が、目立たないより目立つ方が、より強い印象を与えられることには変わりありません。ただ、強い印象とは言っても所詮はアクセサリーの印象に過ぎないので、自分よりも目立たせてしまうような使い方は避けましょう。

基本的に、自分の好きな物を好きな場所に使えば良いのですが、数や種類に気を配ると、より相手に印象付けやすくなります。具体的には

1.相手がどこを見るのかを誘導する

2.相手に与える刺激の種類に気を付ける

です。

前者は、アクセサリーが相手の注意を引くことを意識して扱うということです。ブレスレットなら手の動き、ネックレスなら体の動き、ピアスやイアリングなら顔の動きを、相手に印象付けます。自分のどこを印象付けたいのか、何を見て欲しいのかそれに応じて選びましょう。複数の場所に付けると豪華にはなりますが、相手の意識が色々な所へ向くので、自分自身を印象付けることに対しては、結局あまり効果的ではないのです。

 

後者は、光を反射するのか、色が目立つのかといった、相手の注意を何が引きつけるのかという種類の話です。この刺激の種類を変えれば、複数のアクセサリーを付けていても相手の意識をコントロールできます。何に注目するのかは本来相手次第ですが、同じ種類の刺激で無ければ、最も目立つものに意識を向けさせられます。目立たせる簡単な方法は、アクセサリーに動きを持たせることです。指輪をしている手を動かせば、指が目立ちます。

 

魅力を溢れさせるという言葉がありますが、それを実際に行うには道具の力が必須です。自分をより輝かせるための方法は色々と提案されていますので、人に自分の何を見てもらいたいのか、自分が印象付けたいのは何か。それを考えて適切な物を選ぶと良いでしょう。

 

<まとめ>

l あくまでも主役は自分自身。

l アクセサリーの種類や場所に気を配ろう。

l 動かせるものは良く目立つ。

 

謹告

この文章は著者の主観に基づく考察が多分に含まれます。内容を実行して何らかの不利益を被った場合においても、その責任は一切負いかねますのでご了承ください。

また、ここに書かれた技術が誰にでも適するとは限りません。内容を基にして、自分なりの工夫をされることを推奨します。

自分に合った対人技術を身に付けることが最良であり、この文章が読者の役に立つことを願っています。

 

【第10回】すぐに使える対人術/色調/色2

何色が好き?と聞かれて、思い浮かべる色が自分の好きな色です。しかし、好きな色だからと言って、自分に合った色だとは限りません。今回は色調をテーマに、自分に合う色の確かめ方をお話しします。

寒色・暖色という言葉があります。寒色は青・白・黒などの色調。暖色は赤・黄などの色調です。単語の通り、冷たい感じや温かい感じを受ける色調を意味しています。色を上手く使って自分を表現する時に知っておくと便利です。

 

知っての通り、人間の肌の色は異なります。これは人種という大きな枠の話では無く、一人一人の肌にある色素の種類と量、血管の通り方と血流量などの影響を受けて、それぞれ異なる肌色になります。青白い肌とか血色の良いと言われるものが具体例に当たります。これを踏まえた上で、自分の肌に寒暖どちらの色調が合うのかを調べてみましょう。

方法は簡単です。自分の肌の色が白に近いほど、寒色との相性が良く、赤や黄色味が強いほど暖色との相性が良くなります。相性が良いということは、似合うように見えやすいということです。専門的には、ここから更に細かく分けられるのですが、ここでは割愛します。自分の肌に合う色調を知ることで、自信を持って色を選べるはずです。

 

この自分に合う合わないとは別に、寒暖色の使い方は重要です。

タイル 黄色 青

この青と黄色の図は、上下の配色が違います。特に何かを表していない場合、取り立てて意味を持ちません。ここで、何かを表すものに変えてみます。

人型 キイロ・アオ

人型の図に変えてみました。暖色の方が膨らんで見えませんか?

明るい色は膨張色と言い、輪郭が膨らんで見えるのです。ちなみに反対の暗めの色は、収縮色と呼ばれています。

また、顔が基準に印象を考えると、暖色を近くに配色すると明るく見えます。反対に、寒色を配色すると落ち着いて見えます。

このように色調の違いは様々な働きを持っています。これらを活用して、自分を上手に演出しましょう。

 

<まとめ>

l  自分の肌色に合った色調がある。

l  寒色・暖色それぞれを上手に使おう。

 

謹告

この文章は著者の主観に基づく考察が多分に含まれます。内容を実行して何らかの不利益を被った場合においても、その責任は一切負いかねますのでご了承ください。

また、ここに書かれた技術が誰にでも適するとは限りません。内容を基にして、自分なりの工夫をされることを推奨します。

自分に合った対人技術を身に付けることが最良であり、この文章が読者の役に立つことを願っています。

 

 

 

 

 

<おまけ>

自分の肌色に合った色調を選べ。そうは言っても、自分の肌は赤みが強いけど青色や黒が好き。とか、白色の服を着たい。という人は多いでしょう。

そういう時は、人間が一番注目するのは表面であるということを利用します。

自分の肌色に合った色調の物を一番目立つところに持ってくる。例えば、寒色が合う肌の人が赤や黄色を着たい場合には、寒色系を一枚上に羽織ります。それだけで、自分の肌と好みの色の色調の違いを克服できます。

加えて、寒色と暖色を合わせて使うと対比色になり、より色彩を鮮やかに印象付ける効果もあります。上手く使いましょう。

 

 

【第9回】すぐに使える対人術/ファッション/色1

人前に出る時に身なりを気にしない人はいません。自分は適当なままでいいんだと思っている人でも、その人の考える「自分」の姿に合わせた格好をしています。

今回は色についてお話しします。カラーコーディネートはファッションの重要なポイントです。自分の感性を表現するだけでなく、相手からどう見られるのかを意識して身に付ける物を選ぶことが大切です。

 

さて、赤・青・緑などなど、様々な色の種類がありますが、それぞれに人間は印象付けをしています。情熱的な、とか、落ち着く、安らぐなど、日頃から形容詞として使われる言葉が、そのイメージを示しています。人は印象の影響を受けて状況や物事を判断するので、色彩に応じた反応というのも当然起こってきます。

そのため、人に特定の印象を与えたい時だけでなく、自分の心に影響を与えたい時にも効果はあります。ただし、自分の目にその色が見えなければ、着ていても反応しません。意識的に自分はこの色を着ていると心に自覚させれば、似た反応を誘発させることは可能ですが、人の心に色が影響するのは、目がその色を捉えられる時だけだと覚えておきましょう。

 

色には様々な種類がありますが、最も基本的なのは赤・青・黄からなる色の三原色です。原色という言葉には、刺激的な色という意味もあります。この意味の通り、原色は人間に刺激的な印象を与えます。一般的に明るく鮮やかな色を原色と捉えることが多く、はっきりと発色するので目立ちます。色の種類に関係無く、原色は相手に強烈な印象を残します。自己主張が強いため、一度に多用するのはおすすめしません。

あまり多用すると、原色の服を着ている本人は元気でも、周囲から見て幼稚っぽく、扱いづらい人のような印象を与えます。多用、というのは二つの意味です。一つは色の種類。二つ目は色の面積です。原色の与える悪い印象は、主に後者から生まれます。複数の原色を広い面積で用いると、いわゆるどぎつい色を見せられて目がチカチカするという気分や状態を引き起こします。

 

原色は意図的に目立たせないように配色すると効果的です。例えばアクセサリーなどの小物や、服のデザインの中の一部に使うと上手く扱えます。普段は気に留められないような場所や、存在を主張して欲しい所に使いましょう。

次回に続きます。

 

<まとめ>

l  色には、それぞれ種類に応じた印象がある。

l  人間は見える色に反応を示す。

l  原色は強い印象を与えられるので、上手く目立たせたい場所に使おう。

 

謹告

この文章は著者の主観に基づく考察が多分に含まれます。内容を実行して何らかの不利益を被った場合においても、その責任は一切負いかねますのでご了承ください。

また、ここに書かれた技術が誰にでも適するとは限りません。内容を基にして、自分なりの工夫をされることを推奨します。

自分に合った対人技術を身に付けることが最良であり、この文章が読者の役に立つことを願っています。

 

【第8回】すぐに使える対人術/対人哲学3/集団に所属する

人間は身内や気に入っている人とのコミュニケーションを好み、そのやり方は見知らぬ他人に対する関わり方とは大きく異なります。

くだけた言葉使いができる間柄である程、自分の本心を隠さなくて良い関係である程、人はその対象に甘えます。人間は成長に従って、甘えの程度を下げた関係でも築いていけるようになります。また、甘えの程度が低い関係からでも、次第にその段階が上がっていき、自分と相手の求める甘えの程度が一致する段階で、友人関係や仲間意識が成立します。

 

今回は、集団内での関係についてお話しします。

一定の甘えが通用する場合には、コミュニケーションを取ることに特別の配慮はいりません。身内に対してはもちろん、同じ目的や嗜好を持って集まるグループにおいても、最低限度の礼儀と、場面に則した振る舞いを守れば、問題が起こることはほとんどないでしょう。

しかし、その甘えが通用するかどうかの判断は慎重に行わればなりません。たいていの場合、集団の仲間と認められていれば大丈夫です。

 

集団には、集まる目的や理由があります。関係する全員が何かを求めて集まっており、それを邪魔してはいけません。それぞれの人間が持つ立場や能力、興味が違う中で、集まって作られる集団の意味を理解した上で所属するところを選ぶ必要があるのです。

 

今回の提案は、自分の興味で集団を選ぶ。です。言い換えると、自分が興味のあることを目的として活動している集団に入ることです。当たり前のように感じるでしょうが、意外とそれができている人が少ないのが現実です。多くの人が集団が持っているものを基準にして所属を選択するからで、例えば、有名である、規模が大きい、レベルが高いなどです。これらは集団のものであって、そのネームバリューを使うことは出来ても、その集団で行う活動には関係しません。

 

人間は、やらされてやることには力を出し渋ります。反対に、やっていて気持ちの良いことには全力を出します。一緒に活動しているにもかかわらず、集団が求めているものに対して力をちゃんと出さない時、周りの人からは活動の邪魔をしているように見えるのです。

子どもの頃ならば、無理矢理に塾や習い事に通わされても嫌々が通用しますが、高校や大学、会社など、義務ではない活動集団に、興味を持たない人間が入ると、その人にとっては時間の無駄。周囲の人間にとっては邪魔と、互いにデメリットしかありません。

自分が積極的に関わっていける内容を扱う集団に所属する選択が、良好な人間関係を築く前提であることを知っておきましょう。

 

<まとめ>

l  親しき仲にも礼儀あり。

l  集団に入る前に、何が目的なのかを理解しておこう。

l  自分がやる気のあることを、自分でできる集団に入ると、良い人間関係を築きやすい。

 

謹告

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【第7回】すぐに使える対人術/目線の方向/目の方向と脳の働き2

目の体操をしたことがある人は経験があるかも知れません。目だけを動かすのに、首も動いて顔ごと目を向けようとした方向に動いてしまう。これは、目が何かを見ようとしている時の自然な反応です。人間の視界は360度ではないので、首ごと動かして広い範囲の情報を得る工夫をするのは当たり前です。

 

以前、右上を向いている時には脳の想像力が高まることをお話ししました。この目の方向に対応する脳の働きは、当然ながら他の方向にもあります。今回はそれらについてお話しします。

 

1.左上

左上を向くと、過去に見たものの記憶を思い出しやすくなります。以前に見たことのある図形や写真といった、なんらかの形を持つものを脳がイメージしています。

2.左下

左下を向くと、過去に聞いた声や音を脳がイメージしやすくなります。逆に、現在の音や声は聞こえていても聞いていない状態になりやすいと言えます。

3.右下

右下を向くと、肌で感じる感覚を思い浮かべやすくなります。暑さ寒さや痛み、味覚などが脳にイメージされます。

4.正面

正面を向いている時は、自分が今、意識を向けている対象が脳にイメージされています。

 

ここまで紹介してお分かりかと思いますが、正面以外の方向は過去や空想を脳に思い浮かべる働きを持っています。全ての方向を紹介した訳ではありませんが、基本的に人とコミュニケーションを取る場合には正面に目を向けておくのが一番良いと分かります。

 

ずっと相手の目を見て話をする必要は無く、話しながら相手にどう印象付けるかを意識するようにと、このシリーズ最初の回でお話しました。今回のポイントは、自分にとっての目線と相手から見える目線は違うということです。

自分と相手に身長差がある場合には、自分はまっすぐ前を向いていても、相手から見たら上下方向にずれたところに目線があるように見えることがあります。正面というのは厳密にまっすぐ前を見ることを表すのではなく、もっと幅のある空間を表すと考えましょう。相手を前にして、上下方向に目を動かすのは自分から見た正面の範囲内です。

自分にとっての正面を意識しながら、相手に思い通りの印象を与えるなどと難しく考えながら会話をする必要はありません。当たり前の礼儀として、話し相手のいる方向に、きちんと顔を向けて話をすれば良いのです。顔が相手の方向を向いていれば、自分の脳は相手を捉えて働いてくれます。

 

<まとめ>

l  視線の方向はそれぞれ視覚・聴覚・触覚のいずれかのイメージを脳に想起させる。

l  現在を捉える一番良い方向は正面である。

l  話し相手の方を向いて、きちんと話をしよう。

 

謹告

この文章は著者の主観に基づく考察が多分に含まれます。内容を実行して何らかの不利益を被った場合においても、その責任は一切負いかねますのでご了承ください。

また、ここに書かれた技術が誰にでも適するとは限りません。内容を基にして、自分なりの工夫をされることを推奨します。

自分に合った対人技術を身に付けることが最良であり、この文章が読者の役に立つことを願っています。